「終活なんて、まだ早い」40代、50代の方からよく聞く言葉です。しかし、終活は「人生の終わり」の準備ではなく、「これからの人生を自分らしく生きる」ための準備です。
特に、おひとりさま(独身者)の場合、配偶者や子どもがいる方とは異なる準備が必要になります。
おひとりさまの現状
令和2年(2020年)国勢調査によると、50歳時点での未婚率(生涯未婚率)は以下のようになっています。
- 男性:28.25%(約4人に1人)
- 女性:17.81%(約6人に1人)
また、単独世帯(1人暮らし)は一般世帯の32.4%を占め、最も多い世帯形態となっています。つまり、「おひとりさま」は決して珍しい存在ではなく、むしろ現代社会の標準的なライフスタイルの一つとなっているのです。
こんなお悩みはありませんか?
「自分に何かあったとき、誰が対応してくれるのだろう…」 「認知症になったら、財産管理はどうなるの?」 「葬儀や遺品整理は誰がやるの?」 「遠方の兄弟に迷惑をかけたくない」 「財産は誰に渡せばいいのだろう」
これらは、おひとりさまが抱える共通の不安です。しかし、適切な準備をしておけば、これらの不安は大幅に軽減できます。それが「終活」です。
終活とは?なぜ必要?
終活とは、人生の最期を迎えるにあたって、さまざまな準備を行うことです。具体的には以下のような内容が含まれます。
- 財産や資産の整理
- 遺言書の作成
- 葬儀やお墓の準備
- 医療・介護の希望表明
- デジタル遺品の整理
- 身辺整理
おひとりさまに終活が特に必要な理由
- 緊急時の対応をしてくれる家族がいない、または遠方にいる
入院手続き、施設入居契約、財産管理など、判断能力が低下したときに対応してくれる人が身近にいない可能性があります。 - 死後の手続きを任せる人がいない
死亡届の提出、葬儀の手配、遺品整理、各種解約手続きなど、死後に必要な手続きは多岐にわたります。 - 財産の行き先が不明確
民法では相続人の順位が定められていますが(第887条以下)、疎遠な親族に財産が渡ってしまう可能性があります。 - 孤独死・孤立死のリスク
発見が遅れると、賃貸住宅の場合、原状回復費用などで多大な迷惑をかけてしまう可能性があります。
おひとりさまの終活、何から始める?
終活と聞くと「大変そう」「何から手をつけていいかわからない」と感じるかもしれません。
そこで、おひとりさまが優先的に取り組むべき項目を、ステップ別にご紹介します。
1. 財産のリストアップ
まずは、自分がどんな財産を持っているか、書き出してみましょう。以下は、相続財産の代表例です。
金融資産
- 銀行預金(銀行名、支店名、口座番号)
- 証券口座(証券会社名、口座番号)
※生命保険は実は相続財産では有りません。しかし、この機会に受取人が誰なのか、誰が受け取るのか、などを確認しておくとよいでしょう。
不動産
- 自宅(所在地、面積、取得時期)
- 投資用不動産
- 土地
負債
- 住宅ローン
- その他の借入
その他・動産
- 貴金属、骨董品
- 会員権(ゴルフ、リゾートなど)
- デジタル資産(暗号資産など)
- 普通車・軽自動車
2. 人間関係の整理
緊急時に連絡してほしい人、頼れる人をリストアップしましょう。
兄弟姉妹・親戚・親しい友人・信頼できる知人・かかりつけ医など、どんな方でも構いません。
3. 重要書類の保管場所の確認
以下の書類がどこにあるか、確認しておきましょう。
- 戸籍謄本、住民票
- 印鑑登録証明書
- 実印、銀行印
- 不動産の権利証
- 保険証券
- 年金手帳
- 通帳、キャッシュカード
- クレジットカード
エンディングノートは、自分の希望や情報を書き留めておくノートです。法的な効力はありませんが、以下のメリットがあります。
メリット
- 自分の希望を周囲に伝えられる
- 必要な情報を一か所にまとめられる
- 書きながら終活の全体像が見えてくる
- いつでも書き直せる
記載する内容例
- 基本情報(本籍、マイナンバーなど)
- 財産の情報
- 医療・介護の希望
- 葬儀・お墓の希望
- 遺品整理の希望
- デジタル遺品(SNSアカウント、サブスクリプションなど)
- 大切な人へのメッセージ
エンディングノートは市販のものを購入してもいいですし、自分でノートに書いてもかまいません。
注意点: エンディングノートには法的効力がありません。財産の分配など法的に確実にしたい事項は、後述する遺言書で対応する必要があります。
民法第960条以下に定められた遺言書は、財産の分配について法的効力を持ちます。
おひとりさまに遺言書が必要な理由
遺言書がない場合、民法第887条以下の規定に従って、法定相続人に財産が分配されます。
法定相続人の順位
第1順位:子(およびその代襲相続人)
第2順位:直系尊属(父母、祖父母)
第3順位:兄弟姉妹(およびその代襲相続人)
おひとりさまの場合、以下のような状況が考えられます。
- 疎遠な兄弟姉妹に財産が渡る
- 会ったこともない甥・姪に財産が渡る
- 相続人がいない場合、最終的に国庫に帰属する(民法第959条)
遺言書を作成すると、上記のようなケースを回避でき、以下のようなメリットもあります。
- お世話になった人に財産を遺せる
- 信頼できる団体(NPOなど)に寄付できる
- ペットの世話を依頼し、費用を残せる
- 特定の財産を特定の人に渡せる
遺言書の種類
一般に利用される遺言書には、通常2種類があります。一つは、「自筆証書遺言」。もう一つは、「公正証書遺言」です。後者の方が、非常に選択される方が多いです。
おひとりさまへのおすすめ!
公正証書遺言をお勧めします。理由は以下の通りです。
- 検認不要:相続開始後すぐに手続きを進められる(民法第1004条第2項)
- 紛失・改ざんのリスクがない:原本は公証役場で保管される
- 方式不備のリスクが低い:公証人が作成するため
- 発見されないリスクがない:公証役場で検索できる
おひとりさまの場合、自筆証書遺言を自宅に保管していても、発見されない可能性があります。しかし、公正証書遺言であれば、相続人が公証役場に問い合わせることで存在を確認できます。
任意後見契約は、将来、認知症などで判断能力が低下したときに備えて、あらかじめ後見人を選んでおく制度です(任意後見契約に関する法律第2条)。
任意後見契約とは
委任者が、受任者に対し、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約
任意後見契約に関する法律第2条第1号
特徴としては、公正証書で作成する必要がある・家庭裁判所が任意後見監督人を選任して初めて効力が生じる・自分で後見人を選べるといった点が挙げられます。
任意後見人ができること
任意後見人は、財産の管理(預貯金・不動産など)をはじめ、介護契約の締結や施設への入所契約の締結を代理として行うこともできます。また、日常の生活費の支払いも代わりにしてくれるので、安心して任せられる人を選任しましょう。
任意後見人ができないこと
一方で、任意後見人には身上監護(実際の介護、掃除など)等の義務はありません。あくまで、財産や生活費の管理を代わりにしてくれる人、といった認識がよろしいかと思います。
また、医療行為に対する同意(呼吸器を外すなど)は任意後見人であってもできない行為です。
おひとりさまにとってのメリット
- 信頼できる人に財産管理を任せられる
- 法定後見(裁判所が後見人を選ぶ)を避けられる
- 自分の意思を反映できる
誰を任意後見人にするか
任意後見になれる人は広く設定されています。例えば、信頼できる親族(兄弟姉妹、甥姪など)・親しい友人・専門家(弁護士、司法書士、行政書士など)・専門組織(社会福祉協議会、NPO法人など)がよく選任されることが多いです。
親族や友人がいない場合は、専門家や専門組織に依頼することも可能ですので、お気軽にご相談ください。
任意後見人への報酬
任意後見人への報酬は、契約で自由に定められますが、専門家に依頼する場合、月額2〜5万円程度が一般的です。ご親族を任意後見人にされる場合は、無報酬であることもよく見受けられます。
死後事務委任契約は、自分の死後に必要な手続きを、生前に信頼できる人に委任しておく契約です。
民法第653条第1号では、委任契約は委任者の死亡によって終了すると定められています。しかし、最高裁判所は、委任者の死亡後も契約を終了させない旨の合意は有効であると判示しています(最高裁平成4年9月22日判決)。この判例に基づき、死後の事務を委任する契約が認められています。
死後事務委任契約で委任できる内容
医療・施設関係
- 医療費の支払い
- 入院・施設利用料の精算
- 施設からの荷物の引き取り
葬儀・埋葬
- 遺体の引き取り
- 葬儀の実施(方法、規模、費用)
- 火葬・埋葬の手配
- 永代供養の手配
- 散骨の手配
行政手続き
- 死亡届の提出(代行に限る)
- 年金の受給停止手続き
- 健康保険証の返納
- マイナンバーカードの返納
住居関係
- 賃貸住宅の解約
- 電気・ガス・水道の解約
- 電話・インターネットの解約
- 遺品整理
- 居室の清掃
財産関係
- 公共料金の支払い
- 債務の弁済
- 銀行口座の解約(相続人がいる場合は相続手続きが必要)
- クレジットカードの解約
デジタル遺品
- SNSアカウントの削除
- サブスクリプションの解約
- オンラインサービスの退会
その他
- ペットの引き取り先の手配
おひとりさまにとってのメリット
- 死後の手続きを確実に行ってもらえる
- 希望する葬儀を実現できる
- 周囲に迷惑をかけるリスクを減らせる
- デジタル遺品の処理を任せられる
遺言執行者との違い
| 項目 | 死後事務委任契約 | 遺言執行者 |
|---|---|---|
| 根拠 | 契約(民法第643条、656条) | 遺言(民法第1006条以下) |
| できること | 死後の各種事務手続き | 遺言の執行(財産の承継など) |
| 葬儀 | 実施できる | 法的には権限外 |
| 費用支払い | 預託も可能 | 遺言執行者就任後 |
おひとりさまの場合、遺言執行者の指定だけでは不十分です。葬儀や各種手続きは死後すぐに必要になるため、死後事務委任契約を別途結んでおく必要があります。
誰に依頼するか
- 信頼できる親族
- 親しい友人
- 専門家(弁護士、司法書士、行政書士など)
- 専門組織(NPO法人など)
推奨: 任意後見契約と死後事務委任契約を同じ人に依頼すると、手続きがスムーズになります。
1. 身辺整理
断捨離
- 使わないものは処分する
- 遺品整理の負担を減らす
- 大切なものと不要なものを分ける
デジタル遺品の整理: 近年、デジタル遺品が問題になっています。
- SNSアカウント(Facebook、Twitter、Instagramなど)
- メールアカウント
- クラウドストレージ(Google Drive、Dropboxなど)
- サブスクリプション(Netflix、Spotify、各種アプリなど)
- 暗号資産
- オンラインバンキング
- 証券口座
これらのID、パスワード、解約方法をエンディングノートに記載し、死後事務委任契約で処理を依頼しておきましょう。
2. 葬儀・お墓の準備
葬儀について
- 葬儀の規模(家族葬、一般葬、直葬など)
- 宗派の指定
- 予算
- 葬儀社の選定(事前相談、見積もり)
おひとりさまの場合、「直葬」や「家族葬」を選択する方も増えています。
お墓について
- 既存の家のお墓に入る
- 新しくお墓を購入する
- 永代供養墓を利用する
- 納骨堂を利用する
- 樹木葬を選ぶ
- 散骨を希望する
お墓の承継者がいない場合、永代供養墓や樹木葬などの選択肢があります。
3. ペットの行き先
ペットを飼っている場合、自分に何かあったときの世話を誰に頼むか、決めておく必要があります。以下は、その一例です。
- 遺言書で「負担付遺贈」(民法第1002条)を指定する
- 例:「A氏に〇〇万円を遺贈する。ただし、私のペット(犬、名前:ポチ)の世話をすることを条件とする」
- ペット信託を利用する
- ペットの引き取り先として、信頼できる人や団体を事前に決めておく
4. 医療・介護の希望
延命治療について、延命治療を希望するか・どこまでの治療を望むか・尊厳死を希望するか、などこれらをエンディングノートに記載しておくと、判断能力がなくなったときに参考にしてもらえます。
注意: 医療同意は任意後見人でもできません。日本尊厳死協会のリビング・ウィルなど、別の方法も検討する必要があります。
5. 見守りサービスの利用
おひとりさまの場合、孤独死・孤立死のリスクがありますので、以下のようなサービスの利用も検討しましょう。
- 自治体の見守りサービス
- 民間の見守りサービス(電話、訪問、センサーなど)
- 緊急通報システム
- 配食サービス(安否確認付き)
専門家に相談するメリット
終活は、法律、税務、手続きなど、専門的な知識が必要な分野です。以下のような場合は、特に専門家への相談をお勧めします。
専門家に相談すべきケース
- 相続人がいない、または疎遠
- 財産が複雑(不動産が複数、事業資産があるなど)
- 相続税が発生する可能性がある
- 遺言の内容が複雑
- 任意後見人の候補者がいない
- 死後事務を頼める人がいない
相談できる専門家
- 行政書士:遺言書作成、任意後見契約、死後事務委任契約のサポート
- 弁護士:法律問題全般、遺言執行、任意後見人・死後事務受任者
- 司法書士:遺言書作成、相続登記、任意後見人・死後事務受任者
- 税理士:相続税の試算、節税対策
- ファイナンシャルプランナー:ライフプラン全般の相談
よくある質問
- まだ40代で元気なのに、終活は早すぎませんか?
-
早すぎることはありません。むしろ、元気なうちにこそ、冷静に自分の希望を整理し、適切な準備ができます。また、任意後見契約は判断能力があるうちにしか結べません。
また、基本的に何度も変更可能なので、一度準備しておくことは今後の生活に非常に安心感を与えることができます。 - 費用はどれくらいかかりますか?
-
内容によって異なりますが、公証人手数料の目安は以下の通りです。
- 公正証書遺言:5〜10万円程度
- 任意後見契約:2〜3万円程度(公正証書作成費用)
- 死後事務委任契約:2〜3万円程度(公正証書作成費用)+ 受任者への報酬
専門家に依頼する場合は、別途報酬が発生します。
- 親族が遠方にいる場合でも、任意後見人や死後事務受任者を頼めますか?
-
頼むことは可能ですが、実際の対応が難しい場合があります。地元の専門家や専門組織に依頼することも検討することをおススメします。
- エンディングノートと遺言書、両方必要ですか?
-
はい。エンディングノートには法的効力がないため、財産の分配など法的に確実にしたい事項は遺言書で対応する必要があります。エンディングノートは、法律で定められていない事項(葬儀の希望など)を記載するために使います。
- 一度作った遺言書や契約は、後で変更できますか?
-
できます。
- 遺言書:何度でも書き直せます(民法第1022条)。書き直した場合、新しい日付の遺言が優先されます。
- 任意後見契約・死後事務委任契約:変更契約を結ぶことで変更できます。
- 相続人が全くいない場合、財産はどうなりますか?
-
相続人がいない場合、一般的に以下の流れになります。
- 家庭裁判所が相続財産清算人を選任(民法第952条)
- 債権者への弁済
- 特別縁故者への財産分与(民法第958条の3)
- 残余財産は国庫に帰属(民法第959条)
遺言書があれば、財産を希望する人や団体に遺すことができます。
まとめ:今日から始める、おひとりさまの終活
終活は「今」を大切にするための準備
終活というと、「死」を連想して暗い気持ちになるかもしれません。
しかし、終活の本質は、「残りの人生を自分らしく、安心して生きるための準備」です。
適切な準備をしておけば、将来への不安が軽減され、自分の希望を実現することができます。また、自分が亡くなった後に他人に迷惑をかけるリスクも蹴り、残りの人生をより一層前向きに生きることができます。
当センターがサポートしてきた方々も、皆様「安心した」「相談してよかった」とおっしゃられています。
おひとりさまの終活チェックリスト
以下のチェックリストを活用して、できることから始めましょう。
□ ステップ1:現状把握(今すぐ)
- □ 財産をリストアップした
- □ 重要書類の保管場所を確認した
- □ 頼れる人をリストアップした
□ ステップ2:エンディングノート(1〜2週間)
- エンディングノートを購入した、または作成を始めた
- 基本情報を記載した
- 財産の情報を記載した
- 医療・介護の希望を記載した
- 葬儀・お墓の希望を記載した
- デジタル遺品の情報を記載した
□ ステップ3:遺言書作成(1〜2ヶ月)
- 遺言書の種類を検討した
- 財産の分配先を決めた
- 遺言書を作成した(または専門家に相談した)
□ ステップ4:任意後見契約(2〜3ヶ月)
- 任意後見契約の必要性を検討した
- 任意後見人の候補者を決めた
- 契約内容を検討した
- 公証役場で契約を締結した(または専門家に相談した)
□ ステップ5:死後事務委任契約(2〜3ヶ月)
- 死後事務委任契約の必要性を検討した
- 委任したい事務内容を整理した
- 受任者の候補者を決めた
- 契約を締結した(または専門家に相談した)
□ ステップ6:その他の準備(随時)
- 身辺整理を始めた
- デジタル遺品の整理を始めた
- 葬儀社に事前相談した
- お墓・永代供養について検討した
- ペットの行き先を決めた
- 見守りサービスを検討した
当センターのサポート
当センターでは、おひとりさまの終活を総合的にサポートしています。
主なサービス
- 終活に関する無料相談
- エンディングノート作成のアドバイス
- 遺言書作成のサポート(自筆証書遺言、公正証書遺言)
- 任意後見契約のサポート
- 死後事務委任契約のサポート
- 任意後見人・死後事務受任者の受任
- 遺言執行者の受任
- 各種手続きの代行
何から始めればいいかわからない、身近に頼れる人がいない、専門家に任意後見人・死後事務受任者を依頼したい、財産の整理や相続対策も含めて相談したいという方も大歓迎です。まずは無料相談で、あなたの状況やご希望をお聞かせください。一人ひとりの状況に合わせて、最適なプランをご提案いたします。
相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。
※本コラムは一般的な情報提供を目的としており、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的なケースについては、専門家にご相談ください。